信夫山は、盆地の中の独立峰なので、あれだけ緑の山なのに水脈がありません。「水のことでは大変な苦労をしたものだ」と言う、御山部落の住人・加藤ヨシおばあさんにお話を伺いました。

●たったひとつの井戸
「今でこそ信夫山にも水道が上がったが、昔は想像もつかないくらい水は大切なものでした」。

 「なにしろ、御山部落には竪井戸がたった1つしかなく、それを部落18戸が使っていたから大変。いったんこの井戸が涸(か)れたら死活問題で、夜中に水を汲(く)みにいくのも珍しくなかった。そこで、区長は井戸に鍵をかけて厳しく分け水をしたんだわね」。
「それでも足りないと、水汲み専用の大樽を馬の背に付けて、下のたんたら清水に水汲みに行った訳よ。当時は道も狭くて険しいから、降り登りは大変な重労働。だから水は金銭より大切に使われたもんだわ」。
「部落では、雨水を大切にためて使ったり、ため池の水を生活に使ったりしていた。珍しいのは、国内でもあまり例のない横井戸があったのよ」。
「風呂なんかは大贅沢(ぜいたく)で、水汲みは大仕事だったから幾晩も同じ湯をたてかえして入ったもんだった。トタン屋根は雨で楽できてうらやましがられたもんだ。洗濯は里に下りて、ガッチャンポンプの井戸で水借りしたのよ」。